「あ〜あ、行っちゃった」
ゴブリンがみんな一緒の方に逃げてったんなら追っかける事はできるよね?
でも残ってた5匹が全部違う方に逃げてっちゃったもんだから、僕は追っかけるのをあきらめたんだ。
どさっ。
だけど、それが正解だったみたい。
何でかって言うと、さっきまでゴブリンに向かって剣を構えてたお姉さんが、その場に倒れ込んじゃったからなんだよね。
「お姉さん、大丈夫!?」
遠くからだと解んなかったけど、もしかしたら後ろの二人だけじゃなくって、あのお姉さんもどっかケガしてたのかも。
そう思った僕は、急いでお姉さんのとこまで走ってったんだ。
そしたらお姉さんは寝ころんだまま僕に向かって手のひらをひらひらさせて、
「大丈夫よ。緊張の糸が切れて、疲れが一気に来ただけだから」
だって。
そっか、そう言えばお姉さんは一人で10匹のゴブリンから後ろのお姉さんたちを守ってたもん。
もう安全だって解ったら、寝っ転がって休みたいって思うよね。
「そっか、よかった。じゃあ、おケガはしてないんだね?」
「ええ、私は大丈夫よ」
お姉さんはそう言いながら体を起こすと、助けに来てくれてありがとうって。
でね、その後すぐに、後ろにいる二人のお姉さんたちにも声を掛けたんだ。
「アマリア、ユリアナ、あなたたちも大丈夫?」
「ええ。ニコラが頑張ってくれたからね」
「とりあえずケガはないわ。足以外は、だけどね」
そしたらお姉さんたちは大丈夫だよって答えたんだけど、そのお顔はなんか苦しそうな笑顔だったんだよね。
「足? お姉さんたち、やっぱり足におケガをしてるの?」
「あ〜、ケガと言うか……」
「ええ。ケガ自体はニコラがすぐにポーションをかけてくれたから、今はもう大丈夫よ」
だから僕、お姉さんたちに足をケガしてるんじゃないの? って聞いたんだよ?
そしたら二人とも僕から片足を隠すようにして、さっきみたいな顔で笑ったんだもん。
それを見たら、それがウソだってすぐに解るよね。
「僕、お姉さんたちがウソ言ってるって解るよ。おケガしてるんでしょ」
「いや、さっきも言った通り傷はポーションで治療したからもう大丈夫なのよ」
「だったらなんで、二人ともずっと座ったまんまなのさ」
あんな風に隠してるって事は、きっとすっごいおケガをしてるんじゃないなぁ?
でも僕がまだ小さいから、それを見せないようにってお姉さんたちは考えてるんだろうね。
じゃなかったら足を隠したりしないで、ほら大丈夫でしょって見せてくれるはずだもん。
「えっと、それは……」
「おケガをしてるなら、すぐに直さないとダメだよ!」
早く治してあげないとって思った僕、たったったって走ってって、お姉さんたちが足を隠してる方に回り込んだんだよ。
そしたらお姉さんたちも大慌てで隠そうとしたんだけど、
「あっ、足が取れちゃってる」
そんなお姉さんたちより僕の方が早かったもんだから、隠す前に見えたんだよ。
そしたらさ、座ってるお姉さんたちはそれぞれ右足と左足の足首から下がなくなっちゃってた。
「あははっ、実はそうなのよ」
「ええ、でも本当に大丈夫なのよ。見ての通り、傷はポーションで完全にふさがっているしね」
そうは言ってるけど、お姉さんたちのお顔はさっきとは違ってとっても悲しそう。
そりゃそうだよね、だってこのまんまだと歩いて帰れないもん。
「もう! やっぱりおケガしてるんじゃないか! おケガは早く直さないとダメなんだよ!」
だから僕、そんなお姉さんたちに嘘ついちゃダメって怒ってから周りを見渡したんだ。
そしたらちょっと離れたとこに取れちゃった足が落ちてたもんだから、僕は急いでそれを拾ってくると、
「すぐに治しちゃうから、ちょっと待っててね」
ドリンクウォーターの魔法で出したお水を使ってついてる砂を落としてから、ピュリファイの魔法でちゃんと綺麗にしたんだよ。
そしてその後、僕はポシェットの中からいろんな魔石が入れてある小袋を取り出したんだ。
「えっと、これを2個出してっと。お姉さん、治しちゃうから足出して」
そんな僕をぽかんとした顔でお姉さんたちは見てたんだけど、足を出してって言ったら二人とも黙って出してくれたんだ。
だからね、僕は魔力を体に循環させてから取り出した魔石を触媒にして、
「キュア・コネクト」
お姉さんの足がくっつくように魔法をかけたんだ。
この魔法はね、取れちゃった手や足をくっつける魔法なんだよね。
だから魔物に食べられちゃったりして取れたとこがなくなってたら治んないんだけど、今回はゴブリンにやられただけだったからこの魔法でお姉さんの足はちゃんと治ったんだ。
「今度はそっちのお姉さんの番ね」
ちゃんと魔法が使えた事に安心した僕は、そう言ってもう一人のお姉さんの足にも魔法をかけようとしたんだけど……。
「ルディーン君! 無事か? 魔物は!?」
そこにボルティモさんが追い付いて来て、大声でそんな事言うんだもん。
だからびくってして、せっかく体に循環させてた魔力がどっか行っちゃったじゃないか!
「もう! ボルティモさん。今お姉さんのおかげを治してるんだから、邪魔しちゃダメ」
「えっ? えっと……解った、おとなしくしておく」
怒られたボルティモさんは、そう言うとちゃんとおとなしくなってくれたんだよね。
だから僕は、もういっぺん体に魔力を循環させると、今度こそもう一人のお姉さんの足もくっつけてあげたんだ。
「お姉さん。僕ね、この魔法を使うのは初めてなんだ。だからちゃんと治ったと思うけど、一度歩いてみて」
「えっ? ええ、解ったわ」
お姉さんたちはね、まだ何が起こったのかよく解ってないみたい。
そりゃそうだよね。
だってこう言う魔法は普通、神殿に行かないとかけてもらえないんだもん。
冒険者ギルドでキュアやキュア・ポイズンをかけた時だってルルモアさんがすっごくびっくりしてたでしょ?
だから、お姉さんたちがびっくりしても全然おかしくないよね。
「ほっ、本当に歩ける。私の足、本当に治ってるわ!」
でも歩いてみたらちゃんと治ってるのが解ってみたいで、二人とも大騒ぎ。
二人を守ってたお姉さんと三人で、抱き合いながら大喜びしてるんだ。
それを見た僕は、良かったねって思いながら見えたんだけど、
「ルディーン君」
横からボルティモさんが、すっごく真剣なお顔で僕に聞いてきたんだよね。
「俺の見間違いじゃなければ今の魔法。かなり大きな……そう、ツリーホーンハインド並みの大きさの魔石を使ってなかったか?」
「う〜ん。僕、それがどんなのか解んないや。今使ったのはね、村の森にいっぱい出たクラウンコッコって言う魔物から採れた魔石なんだよ」
ボルティモさんは僕に、よく知らない魔物の名前を言ってきたんだ。
だからクラウンコッコのだよって教えてあげたんだけど、そしたらやっぱりって。
「クラウンコッコなら俺も知っている。確か同格か少し上の魔物のはずだ」
「へぇ、そうなんだ。でも、それがどうかしたの?」
「どうかしたのって……」
どうやらボルティモさんが言ってた魔物は、クラウンコッコとおんなじくらい強い魔物みたい。
でもね、それがどうかしたのかなぁ? って思った僕は聞いてみたんだよね。
そしたら呆れた顔、されちゃった。
「そのクラスの魔石って言ったら! ……いや、そんなものを普通に持ち歩いてるルディーン君に言ってもよく解らないか」
でね、その後ちょっとだけおっきな声でなんか言おうとしたみたいだけど、やっぱりやめよって頭を振ったんだよ。
そしてボルティモさんは僕の前でしゃがんで目線を合わせると、
「とりあえず一度バリアンさんたちの所に戻ろう。俺ではうまく説明できる自信がない」
そう言って困ったように笑ったんだ。
取れちゃった足もルディーン君の魔法であっさり解決! とは、ボルティモさんの態度からすると行かないようです。
でもそこはゆるゆるなこの物語ですから、大事には……多分なったりしないと思います。
まぁ例のごとく、周りの大人たちが胃と頭を痛めて何とかしてくれる事でしょうw